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第二回チベット旅行記 (講談社学術文庫 317)明治人の偉業の足跡
今から100年前、ヒマラヤ越え等の幾多の苦難を経て、仏典研究の為に、当時厳しい鎖国を行っていたチベットに入った河口慧海の7年に亘る旅は、「チベット旅行記」全5巻に記されており、この書評でも取り上げた。

その旅の翌年、1904年には、河口慧海は再びインドに向う。ネパール、インドにおいて仏典研究に勤しんだあと、1914年に再びチベットを目指した。この旅を記録したのが本書である。しかし、河口慧海の死後長くこの記録は埋もれていたこともあって、この旅行の記録が刊行されたのはずっと後のことである。

さて、一回目の旅行から15年近くが経ち、世界の秘境チベットにも、かなりの変化があった。何よりもチベットが鎖国を解いたことによって、あるいは河口慧海の第一回旅行以来、日本人でチベットを訪れる者も増えたことなどもあって、チベット入りの困難さは大分和らいだといえるだろう。


勿論、山中での天候の急変により、あわや遭難といった危機にあったりしたことは、数多いが、それでも第一回の困難さからと比べると比較的楽であったようだ。

第二回旅行においては、植物採取を丹念に行ったが、この中から何種もの新種が発見され、その後の植物学に大きな貢献をなした。

又、これは第一回の時もそうであったが、景観の素晴らしさ、ヒマラヤの人々との交流などを、短歌に残しているが、第二回旅行記には、「雪山歌旅行」と称する部編を加えて、旅の困難さのみならず、ヒマラヤの絶景、その地に住む人々の暮し、人情をロマンを持って描写している。その、飾らないが真摯な文章は、当時のヒマラヤ山中の光...


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